潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
涙のオムライス記念日
彼と甘い時間を過ごした連休後、私は父の日に向けたプレンゼンの修正に入った。

オフィスの席に着いてすぐ、「よしっ!」と気合いを入れたまでは良かったが、いつもよりも長い連休と甘々に尽くされた生活のおかげで、やる気はあってもすぐに頭がぼうっとしてきて、なかなか集中できずにボンヤリしてくる。

頭の中では、今頃、尚行さんは何をしてるだろう…とあの端正な横顔を思い浮かび、温もりに包まれた日々のことを考えると、ついついキーボードの上に置いた指先までもが熱を帯びてきそうな雰囲気で、胸が鳴り始める。



(…ハッ!ダメダメ。集中集中!)


気合いを入れ直すようにパンッと両手で頰を叩き、食い入るようにディスプレイに目を向けた時だ。


「あーあ」


間延びした声を上げたのは、新人社員の彼女。
振り返ると両腕を上げ後頭部で組み、目線を天井へ向けながら背中を伸ばすポーズをしている。


「なんかやる気出ない」


正直な気持ちを口にし、周りから「同感」という声が上がる。
私もそれに同調したくなるが自分の立場もあり、「まあそう言わずにやりましょ」と声をかけてキーボードを叩き始めた。


< 203 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop