潜入恋愛 ~研修社員は副社長!?~
「え?もう?」


何時だと驚いた俺は、ハッとしてパソコン上の時刻を確認した。
ディスプレイの左上に表示されている数字は、既に二十二時を回っていた。


「まさか、この時間まで残って生産の準備を確認してたのか?」


嘘だろ…と呟く自分もまだオフィスに居る。徐々にではあるが、仕事の引き継ぎをしようと準備をしているところだった。


「この人、女性だろ?」


確かそうだった、と思い出し、大丈夫なのかと急に不安になった。


『遅くまでお疲れ様です。』


カタカタとメール打って送ると短い間で、『お互い様ですね。』と戻ってくる。

まだ彼女はオフィスにいるんだと知った俺は心配になり、またメールを送信した。


『早目の準備恐れ入ります。お帰りの際はどうか気をつけて下さい。』


何も起こるなよ…と不安になってたんだが、彼女はあっけらかんとした雰囲気で返事を寄越してくる。


『はい。ありがとうございます。越智さんもどうぞお早目にご帰宅を』


こっちを気遣って終了する文字。

それからそういうことが何度か重なり、いつも自分の会社の為に、彼女が残業をしているんだと気づかされた。


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