命令恋愛
「おはよう香菜美。今いいところなの」


そう返事をして再び視線をスマホへ落とす。


画面ばかり見ているから、教室へ来るまでに何人もの生徒とぶつかってしまった。


いつ怪我をしてもおかしくないと、自分でも理解している。


それでも、あたしはゲームから目を離すことができないでいた。


「また優奈の狂愛癖が出て来た」


席についたところで香菜美がそう言って来たので「狂愛?」と、聞き返した。


スマホの画面上では恭介が可愛らしく笑いかけてくれている。


「そうだよ。誰かを好きになると周りが一切見えなくなるの。京太君のときだってそう」


そう言って香菜美はため息を吐き出す。


「そうだっけ?」


「そうだよ。だから警察に捕まったんでしょ?」


そういえばそんなこともあったっけ。


今はもう恭介に夢中で忘れてしまっていた。
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