あかいろのしずく
昨日の記憶を辿っても、それは簡単に壊されてしまう。
昨日のカウンセリングで言った言葉のどこからどこまでが本当で、先生はどこからどこまで真剣だったのか。
何も考えられなかった。現実を受け止めるのに精いっぱいで。
いや、現実を受け止めることさえ難しいから、こんなに混乱しているんだ。
「僕はちょっとした理由があって君たちを集めました。あれは僕の言いなりになってもらうための、“催眠音声”。簡単に言うと、催眠をかけるための仕掛けをしてある音声です」
「......」
「カウンセリングを受けたのは十三人いました。その全員にファイルを送ったんですが、どうやらかかったのは君たち五人だけだったようですね」
催眠音声。
じゃあ私達は、それにかかってここへ来たの?