あかいろのしずく

心中、という言葉が頭を過る。
そう来たか。でもまあ、意外じゃない。

このまま俺が逃げたとしても死んだとしても、こいつは今後生きていれば捕まる身だ。道連れにしたい気持ちは分からないでもないが、どうしてよりによって俺なのか。



再び速まる鼓動に息をつく。

大丈夫、と自分に言い聞かせて鞭を打つ。こんなところで死ぬようなへまはしない。今までだって上手くやってきたんだ、大丈夫。



「その前にさ、聞きたいことがあるんだけど」

「なんです?」



もうこんな茶番劇は終わりだ。

藤谷が言っていたように、西平には俺と同じように大切に思う人がいる。それはおそらく純のことだろう。もしかすれば恋愛感情だとか俺の知らない裏の事情があるのかもしれない。


それでもだ。





「純が死んだ理由、あんたはもう目星が付いてるんじゃないのか?」





行き過ぎてしまえば、なにがあろうと関係ないとは思わないか?





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