あかいろのしずく

案外人の事見てるんだな。まあ、待ってる間に探すのもいいか。西平がここにいたということは、この部屋のどこかにあるってことだし。



「まあ、そうだな。探すか」



メモリーカードが無事なら、中にある情報もまだ手元に残る。粉々になっているならまあいいけど、できれば見つけたいところだ。

そう思い地面に手をついた、その時だった。






ガタ。






頭上から小さな音がした。

上を向いたナナカの右頬に、橙色の光が灯っていた。ほんのり赤く染まった黒髪と、瞳の中で揺れる炎。目がチカチカするほど消えたり明るくなったりを繰り返し、もうそれだけ経っただろう。

時が、止まったような気がした。
< 654 / 754 >

この作品をシェア

pagetop