ラブパッション
あるべき姿へ
梅雨の谷間の土曜日。
薄曇りのどんよりした空に夕闇が漂い始めた頃、私は青山のコンベンションセンターを訪れた。


お洒落で洗練された街の一等地に立つ、大きなビル。
グランドエントランスの、立派な案内ボードに迎えられる。


優さんから趣旨を聞いて想像していたけど、やはりなかなか大規模なパーティーのようだ。
エントランスのあちらこちらにいる、招待客と思しき人たちは、男性も女性も正装。
または、それに準じるフォーマルなスタイルだ。


パーティーなんて初めてで、どんな格好をしたらいいかわからなかった。
一応、友達の結婚式に出席する時より、ちょっとしっかり目を意識した。
それでも、受付で招待状を提示してパーティー会場に入ってみて、場違いじゃないかと不安に駆られる。


若きセレブカップルをターゲットにした、新築マンションプロジェクトの発表となれば、招待客もセレブ……つまり富裕層と呼ばれる人たちだ。
私がこの場にそぐわず、浮いていると思うのも当然のこと。


私は会場の隅っこに移動して、心細さに耐え、隠れるように身を縮めた。
ほとんど縋る気分で、私をここに招待した張本人を、目を凝らして捜す。
すると。


「夏帆ちゃん。よかった。来てくれたか」

「瀬名さん」
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