おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~
それから数日後の朝食の時間のことだった。
リンネが目を覚ましてから今までずっと、エリックが目を覚ますまでは国王がリンネを自分の執務室へ呼ぶことはなかった。
それなのに、今日は朝食を食べた後に自分の執務室へ来るようにリンネに声をかけたのだった。

どうして今頃、執務室へ呼ばれるのだろうかと疑問に思ったものの、既に国王は朝食を食べ終え席をはずしていたので聞く事ができなかった。
リンネは急いで朝食を食べ終えると、自分の部屋にもエリックの部屋にも立ち寄ることなく、執務室へとむかった。

「リンネにございます」

執務室の前で自分が来た旨を伝えると中から入るように声がかかった。
リンネが中へ入ったことを確認すると、国王は人払いをさせ執務室のドアの鍵を中から閉めた。

「今日、呼んだのはただひとつ。
リンネ・エトワール・スカーレット・エルディールを皇太子とする。
クリス・ジョン・マルモン・エルディールは既に廃太子となっている。
実の姉に恋心を抱いているような奴に国を任せることなどできぬ。そんなものが国王になるくらいならば女が国を治めた方がましだ!
本当ならば、エリックを婿入りさせて次期国王にさせてもよいのだが、なにぶんずっと目を覚まさなかった。
もしも、後遺症かなんかでまた眠ってしまってはかなわん。

しかし、まだ他の大臣の承認は一切とっておらんし、これからも私がとることはない。
リンネ、自分の力を証明しなさい。
女でも政治に参画できるほどの能力を持っているものがいると。
そして自分の力で次期国王の座を奪い取りなさい。
私はもう、リンネを止めることは疲れたから今後一切しない」

まさか、自分が次期国王になる可能性が出てきたなど一回の説明では理解できなかった。
しかし、何度聞いても国王の考えは変わらず、これが現実であると思わざるを得なかった。

女は男をたてるために存在しているとまで言われている、この男尊女卑の考えが深く根づいているエルディール王国が変わろうとしている瞬間であった。
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