おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~
『愛しの娘へ

本来、この服はふたりがすべてを解決した後に、渡そうと思っていた。

だが、それでは遅いかもしれない。

思っていたよりも問題は大きく、すべてを解決するのに時間がかかるだろう。

リンネは、私の知っている女の中で誰よりも活発で手の付けられないじゃじゃ馬だった。

政治に興味を持つ娘なんて最初はどうすればいいのかわからなかった。

エリック殿と出会い、この国のことを本気で考えるリンネの姿を見ていると、女が虐げられる時代は終わったのかもしれないと思うようになってきた。

ふたりがエメに行っている間に大臣たちは私が説得しておいた。

最初は首を縦に振らなかった大臣たちもふたりが力を合わせてエメでの問題を解決したら、リンネが皇太子となり、ゆくゆくは私の後を継ぐということを承諾させた。

これから行く先ではもう立派な私の後継者、皇太子だ。

今までは身分を名乗れず、歯がゆい思いをしたかもしれないがこれからは自分に与えられた身分を有効活用してほしい。

その身分が保証されるように、リンネの荷物の中に指輪を入れておいた。

この指輪は歴代の王から皇太子へと受け継がれてきた由緒正しき指輪だ。

この指輪をはめておけば、その身分を疑う者もいなくなるだろう。

だが、そのぶん女なのに生意気だと命を狙われる機会が増えるかもしれない。

その時はエリック殿、娘を助けてやってほしい。

何度も貴方に会うたび、貴方が本当にリンネを愛しているということは痛いくらいに伝わってきた。

後に私の息子になるのだからぜひともふたりの結婚式には私が送った白の軍服をきてほしい。

きっとリンネが手作りした純白のウエディングドレスと並んだ時によく似合うだろう。

ふたりのことはいつでも無事を祈っている。

どこにだしてもふたりは恥ずかしくない私の自慢の子供たちだ。

この気持ちに嘘は決してない。

頑張ってこの国を守り通しておくれ。

マクシムより』

急に送られてきた国王からのプレゼントに恐れおののいたふたりであったが、そんなことよりもリンネが皇太子として認められたことが何よりも嬉しかった。

また、3枚もの紙にわたって綴られたマクシム気持ちはふたりの胸に深く刻まれた。
その日からリンネは皇太子の証である指輪をはめ、気持ち新たに頑張っていく決意を決めた。
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