おてんば姫の手なずけ方~侯爵の手中にはまりました~
「一人だけまだ戦いの心得を持っていないものがいます。
つい最近アラン様のところから私のところに来たメグはまだ護身術を習っていません。

私はメグだけつれてサハール皇国へ参ります」

メグの護身術の指南はこの問題が解決してからと少し前に決まっていたため、たしかにまだ戦いの心得は持っていなかった。

女性だけで行かせるのは何とも心もとないと思っていた国王も、約束を破って戦争になるよりはましと考えリンネとメグだけで行くことを許可しようとしていた。

「仕方ないが向こうの意見を飲むほかない。
リンネ、メグふたりでサハール皇国へ行くことを許可す…」

「なりません!!
私もついていきます」

「エリック殿、向こうは王族と使用人以外の入国は認めていないのだぞ。
まだ王女の婚約者の段階では王族とは呼べないから条件を満たしていない」

自分の言葉を遮ってまで意見を言ったエリックに国王は少しだけ苛立ちを隠せないようであった。
強い口調で行く権利はないといえばエリックも諦めるだろうと考えていた国王であったが、エリックはあきらめなかった。

「もちろん、王族として行くのではありません。
新米の使用人としてリンネ様の身の回りの世話をする役目として行くのです。

私はゼロといったらうそになりますが、戦いの心得は持っていません。最小限の自分を守るくらいの力はありますが、それくらいだったら人間誰しもが持っているものなので問題ないと思いますが、国王はいかがお考えですか」

まさか使用人に扮してリンネについていくと言い出すとは思っていなかったリンネと国王は唖然としていた。

下級貴族出身の令嬢ならば王宮で使用人として働き、ある程度してから上位貴族に嫁ぐというのは普通のことであったが、侯爵家のしかも次期侯爵となることが決まっている人が使用人になることはありえなかった。
< 99 / 154 >

この作品をシェア

pagetop