約束のエンゲージリング


「で?、、、何があった?」

『ごめん。』

「それは何に対しての謝罪だ?」






飲み物を注文し終えると、こちらを真っ直ぐ見つめてくる親友。

理由は述べず謝罪してみるものの、それを許してくれる訳もない。







覚悟を決めて一呼吸おいて呟いた。












『千佳を、、、傷つけた、、。好きだって告白されて、、でも俺はそれには応えられないって伝えた。』





孝は自分の呟きが聞こえなかったかのように全く動揺することなく静かにアルコールのはいったグラスに口をつけた。



なぜ?そう思わずにはいられなくて、孝の横顔を見つめると視線がゆっくりとこちらに向いた。







「、、それがどうした?いつかはそうなると分かってた事だ。千佳はお前の事を兄貴なんて思ってない。その証拠に俺の事は〝孝兄〟と呼ぶのに対してお前の事は幼い頃から〝マサさん〟て呼んでただろ。お前だって千佳が自分に向ける感情が兄妹とは違うものだと薄々気づいていた筈だ。、、違うか?」

『っ、、、。』










仮にいずれこうなるであろう未来を予測していたとしても落ち着いて呑んでいられる孝に怒りさえ覚える。


両親の死という悲しみを乗り越え、自分の進みたい将来も夢も全て諦めて、幼い妹の為に必死に生きてきた。

自分の人生をかけて大事に育ててきた彼女が酷く傷つけてられたのに何故そんなに落ち着いていられるのだろう。






俺だったら、、俺だったらお前のように冷静でなんていられない。




殴るくらいじゃ気が済まない。





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