Legal office(法律事務所)に恋の罠 *番外編~ジェラシーは内密に~
ファン氏への挨拶が終って奏が社長室に戻ると、すっかり就労時間を過ぎていた。

勿論、直帰と表示された和奏の姿はない。

奏はスマホをスーツのポケットから取り出し、SNSのメッセージ着信に目を通す。

和奏に送ったメッセージはいまだに既読がつかない。

何かあったのだろうか?

それとも奏の浮気を疑って嫌気がさした・・・?

奏はいてもたっても居られず、スマホの通話画面をフリックした。

呼び出し音が虚しく響く。

6回、7回、8回・・・。

「もしもし・・・」

「和奏?」

「あら、奏さんね。和奏ちゃんならお風呂に入ってるわ。今日は疲れているみたいなの。また明日、会社で話すのでも構わないかしら?」

電話口に出たのは、山崎庄太郎の妻、そう、和奏の叔母だ。

和奏は、自分のマンションに帰らず、今日は山崎家に向かったのか・・・。

ひとまず、身の安全は確認できてホッとした奏だったが、話もできないくらいの状態とはどういうことだろうか?

「風邪・・・ですか?」

「フフ、違うわ。心配しないで、大丈夫だから」

和奏の叔母はあっけらかんとしているため体に大事があるわけではないらしい。

「わかりました。明日は10時にファン氏との会談があるとお伝えください。もしも調子が戻らないようなら私に連絡をくだされば大丈夫です」

「承りました。ご心配ありがとう」

通話を終えると、奏はまたもやため息をこぼす。

今日は何をやっても空回りする一日だった。

明日こそは、和奏との関係を修復したい・・・。

いや、そもそも綻んでいるのか・・・?

奏はそんなことを考えながら、明後日のファン氏のパーティーにおけるおもてなし企画の最終確認に向き合った。

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