Legal office(法律事務所)に恋の罠 *番外編~ジェラシーは内密に~
「あれ、和奏は?」

社長室と弁護士執務室を隔てるパーティションは、現在透明なガラスに設定されている。

それは、和奏がスタッフとの面談中ではないことを意味していた。

奏は、デスクの上の書類に決算印を押し終え、溜まっていたパソコンのメールへの返信を終えてからゆっくりと顔をあげて言った。

奏の秘書である松尾は、奏にコーヒーを差し出すと

「和奏さんなら、先程、フロントに向かうと言って出ていかれましたよ」

と答えた。

「フロント?また、緊急コールか?」

「ええ、三浦マネージャーからの電話のようでした」

フロントマネージャー(主任)の三浦達弥は28歳。

175cmのスレンダーな塩顔イケメンで、彼目当てのリピーターも多い。

柔らかな物腰とさりげない気配りは、フロントの鏡だ。

最近、奏は和奏と三浦が一緒にいる場面に遭遇することが多くなっていた。

もっとも

和奏のホテル内巡回に付き添う奏の姿は、ホテルトップの"本来あるべき姿"として評価され、ホテル内外でも公認のカップルと好印象を得ていたので、スタッフから勘違いされることはほぼない。

しかし、フロントで話をする和奏と三浦のことを、美男美女のスタッフカップルと勘違いするゲストはいる。

そのため、奏は和奏を信じていながらも、内心は面白くないと感じているのは事実だった。

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