片想い同盟


「なにお前、呼び出しとかされんの?」

「あ〜……っと、いや、違う違う。されてない」


そう思ったときにはもう遅い。

思わず早口になってしまった私を、拓海が逃すわけもなかった。


あーあ、私のバカ。



「杏」


真剣すぎる声が、私の名前を呼ぶ。



「……いや、本当に違うの。呼び出しとかじゃなくて、たまたま女子トイレでちょーっと言われただけで」

「それいつの話だよ」

「昨日、です」


それは遡ること昨日の朝の出来事。


女子トイレでたまたま他クラスの女子と居合わせて、ちょっと囲まれて、ちょっと嫌味言われたのだ。


調子に乗るな、だの。
消えろ、だの。
お前は唐沢くんにふさわしくない、だの。


そんな、ちょっとした嫌味を。



< 189 / 341 >

この作品をシェア

pagetop