片想い同盟
「なにお前、呼び出しとかされんの?」
「あ〜……っと、いや、違う違う。されてない」
そう思ったときにはもう遅い。
思わず早口になってしまった私を、拓海が逃すわけもなかった。
あーあ、私のバカ。
「杏」
真剣すぎる声が、私の名前を呼ぶ。
「……いや、本当に違うの。呼び出しとかじゃなくて、たまたま女子トイレでちょーっと言われただけで」
「それいつの話だよ」
「昨日、です」
それは遡ること昨日の朝の出来事。
女子トイレでたまたま他クラスの女子と居合わせて、ちょっと囲まれて、ちょっと嫌味言われたのだ。
調子に乗るな、だの。
消えろ、だの。
お前は唐沢くんにふさわしくない、だの。
そんな、ちょっとした嫌味を。