片想い同盟


「拓海」と名前を呼んでもその手は止まらない。


数秒後にピタッと止まると、つぶやくように拓海は言った。


「……俺と、付き合ってるって言えよ」

「へ?」


不意に届いたあまりにも小さいその声に、我ながらまぬけなひと文字が出た。


その言葉の意味を理解するまで、またさらに数秒。



「あぁ、リンチ?たしかに、付き合ってるって言っちゃえば諦めてくれるかもね」


拓海のアイデアに私も賛成だ。

もしかしていま少し様子が変だったのは、それを考えてくれていたからだろうか。



「……っ、あー……。まぁ、そうだな」

「ん?」

「いや、もし女子からの呼び出しならそう使え」

「うん。ありがとう、拓海」


手にした紙をポケットにしまう。



直後に担任が教室に入ってきて、無事に夏休み前最後のHRが終わった。


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