似非王子と欠陥令嬢
どの位時間が経ったのか分からない。

10分と言われても半日と言われても納得出来る様な不思議な感覚だ。

上下左右も分からない白い空間の中で必死で手足を動かす。

何かを掴まないと自分さえも白い光に消えてしまいそうで怖くて堪らない。

ふと指先に何かが当たる。

無我夢中でそれを握り締めた。

誰かがキャロルの背中を優しく撫でる。

まるで大丈夫だと語りかける様なその手は混乱していたキャロルを落ち着かせてくれたのだ。



白い光が消え元の景色が広がる。

「…終わった?」

「みたいだね。」

顔を上げると目の前にまだ顔色の悪いルシウスがいた。

背中を撫でていたのはこいつだったらしい。

解せぬ。

何故こんなに近くにいるのだ。

「…何故?」

「ん?
あぁ、見てごらん。」

キャロルは自分の手を見る。

夢中で掴んだのはルシウスのシャツだったようだ。

一生の不覚だ。

キャロルはおずおずと手を離す。

「…なんかすいません。」

「いえいえ。」

ルシウスは顔色が悪いまま優しく笑う。

先程まで怒り狂っていたとは思えない程穏やかだ。

怒りは収まったらしい。

「…あれ?
龍は一体どこへ…?」

神殿の上にはもう何もいない。

龍は動く事も出来ないと言っていなかっただろうか。

ルシウスがあそこと指先で示す。

そこには布を抱えたカロンが立っていた。

「…次代の龍が生まれたみたいだね。
だから力を渡して彼は消えたんだよ。
伝承で聞いた聖龍の生体と同じだね。」

「…だから静流の遺跡なんですかね。」

「そうかもしれないね。
昔は聖龍の遺跡だったのかもしれない。
何時しか文字が変わってしまっただけで。」

「おい、二人共大丈夫か?!」

レオンとリアムがこちらに走って来る。

「上手くいったのかどうかも分かんねえけど終わったみたいだな。
2人は大丈夫か?
立てるか?」

レオンに聞かれるがもう立ち上がる気力がない。

ルシウスも同じなのか苦笑いしながら片膝を付いている。

「…無理だね。
ごめんリアム、肩を貸してくれるかい?」

「もちろんですよ殿下。」

「ほらキャロルも捕まれ。」

「ありがとうございます。」

よろよろと立ち上がりもう一度水晶を見る。

水晶の色は透き通るような水の色に変わっていた。

きっと成功したのだろう
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