似非王子と欠陥令嬢
キャロルは医務室に戻るなりベッドに身を投げ出す。

今すぐ眠ってしまいたいがそうもいかない。

体が重い。

キャロルはポケットを漁り指輪を取り出した。

これを使うのも久々だ。

キャロルは自分に光を当てる。

これで眠気は阻害されるはずだ。

今寝たら絶対に明日目が覚めるとは思えない。

キャロルを医務室で待っていたレオンがそれが何かに気が付きあちゃーと掌で顔をおおった。

休ませるつもりだったのに本人が意地でも休むつもりがない。

「…レオン、集まった証拠や明日提出する物を全て見せて下さい。」

キャロルはおけの水で顔を洗いながらレオンに頼む。

「いいけどお前…何やる気だ?」

「…明日の協議、王妃の断罪は私がやらせて頂きます。」

「なっ!?」

キャロルはタオルで顔を拭う。

「ずっと考えていた事です。
王妃の断罪にあたって時渡りをした事を黙っているわけにはいきませんから。
知っていて報告しなかったレオン達も何らかの処罰が下されてしまうはずです。
それに禁術に関しては禁書コーナーに立ち入らないと分からない部分まで説明しなければならないと思われます。
全員でかかれば殿下の継承権が例え守れたとして罪人になり殿下の味方は全員処罰されてしまう。
…ならば私が適任でしょう。
禁術を使用したのは私なのですから。」

「でもお前1人が全部被るってそんなの許せるわけないだろ?!」

「レオンが心配してくれているのは分かっています。
ただ先程私は爵位も返上して来ました。
私だからこそ出来たと思いませんか?」

レオンはぐっと言葉につまる。

レオン自身そこは今の今まで覚悟が決まらなかった部分だからだ。

実際王妃への反逆が失敗に終われば一族郎党に処罰が下る程の事態に陥るだろう。

だからと言って次期宰相であるレオンがいきなり地位を捨てたいと願い出た所で周りが決して許さない。

キャロルだから出来たのだ。

親子関係が破綻していると言えるキャロルだからこそ認められたのだ。

「私が全てを捨てて王妃を狩りに行きます。
だからレオン達は全てを抱えて殿下を守って下さい。」

「お前…それで良いのかよ…。」

レオンの言葉にキャロルは口角を上げる。

「それこそ魔女と呼ばれるに相応しい令嬢だと思いません?
…だからレオンお願いします。
もう時間がないのですから。」

レオンがごめんと呟く。

その拳が震えている事に気が付きながらもキャロルは目を背けた。
< 280 / 305 >

この作品をシェア

pagetop