似非王子と欠陥令嬢
「ここに来る時も色々撒く為に必死なんだからな?
俺の苦労分かってくれよ。」

「まっそりゃ大変でしょうね。
麦酒とツマミあげますよ。」

「…ありがと。」

レオンが恨めしげにキャロルを見ながら鳥のハーブ焼きをつまむ。

「そういえば私もうすぐ街に卸しに行くんですけどレオンどうします?」

「あっ俺も偽装でとってある宿行って書類とかとってくるわ。
カラス便もう届いてる頃だし。」

キャロルとレオンは庭に出てリヤカーに作った薬を並べていく。

熱気のこもった室内と比べ森の木々に囲まれた屋外は爽やかな風が吹いていた。

首筋に伝っていた汗が冷えるのが分かる。

毛玉も何をするのか理解しておりリヤカーの隙間に潜り込んだ。

「これで全部か?」

「そうですね。」

「よしじゃあ行くか!」

2人でリヤカーを引きながら森を歩く。

木漏れ日がキラキラと降り注ぎまるで天使の梯子の様だ。

足元を時々精霊が走る。

何となしに住み着いたこの森はいつの間にかキャロルのお気に入りになっていた。

レオンも手を伸ばし木になっている果実をもぎかじっている。

10年通っているせいか手慣れていた。




キャロルはふとずっと気になっていた事を口にする。

「そういえばずっと聞こうと思ってたんですけど。」

「ん?
何だよ?」

「レオンって結婚してないんですか?」

キャロルの問いにレオンははあ?と言いたげな顔をする。

「してるわけねえだろ。
なんで?」

「いや貴族って普通18歳で結婚。
20歳で行き遅れでしょう?
もう私達25歳なんでとっくにしてるもんだと…。」

レオンが掌で顔を覆った。

やけに深い溜息をつかれる。

「えっとなキャロル。
俺言い忘れてたかもしれねえけどな。」

「はい。」

「側近ってさ殿下より先に結婚出来ないのよ。」

「いやそれは知ってますけど…。
えっ待って下さい。
まさか殿下まだ結婚してないんですか?」

「だよな、多分そっからキャロル気が付いてなかったよな?
俺今びっくりしたもん。」

「えっまさかの王太子が行き遅れですか?
性格に難がありすぎて?」

「あっうんそうだな。
そう考えるよなキャロルなら。」

レオンがうんうんと頷いている。

まさかルシウスがまだ結婚していないとは思わなかった。

笑顔が怖かったせいか。

はたまたあの性格に誰もついて行けなかったからか。
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