きみのひだまりになりたい
みんなは作業をよそに、モテ女の恋愛事情に興味津々だった。男子も聞き耳を立てている。たじろぐ結月ちゃんを差し置いて、タイムリーな告白速報に食いついた。
人気ゆえにうわさが出回るのも早いらしい。いつ、どこで、といった基本情報だけでなく、告白のセリフやそのときの状況もこと細かに知れ渡っていた。特に、告白した人が委員長と聞くと、傍聴者たちのテンションが爆上がりした。
結月ちゃんはほほえんでいたけれど、困っていた。声にしなくても、窮屈な思いが伝わってくる。助け船を出そうとした。が、身体がすくむ。
ここで作業しようと真面目ぶったら、空気を読んでいないと思われる。またくすくすと嗤われる。わたしを否定される。それがどうしようもなく怖かった。
「え! 文化祭実行委員の!?」
「結月、告られたの!? やばーい!!」
「めっちゃかっこいい人だよね! なのに断っちゃったの!?」
「もったいない! 付き合えばよかったのに!」
「お似合いだよね。美男美女でさ!」
「まひるもそう思わない!?」
「え……?」
突然、話を振られた。
爛々とした双眼が、ぎょろりと一斉にわたしを貫く。心拍数がはね上がった。矛先がこっちに来るとは想定していなかった。頭が真っ白になり、戸惑い果てる。
結月ちゃんのほうを一瞥する。懇願するように瞳を潤ませていた。とっさに手元へ視線をそらした。
「……う、ん。わたしも、思う」
言ってしまった。思ってもない言葉が、あふれる。止められない。
もう結月ちゃんの顔が見れない。
「その……お、お試しで付き合ったら、好きになるかもしれないし。そういう恋の形もあるって聞くし。うん。委員長みたいにかっこいい人、めったにいないよ」
「だよね! ほらほら、まひるもこう言ってるよ~?」
「期間限定の恋人ってのもドキドキしちゃうね」
「カレシが年上なのがいいんだよー!」
「いいや! 結月がカノジョなのが最高なのよ!」
「それな」