アナログ恋愛



「ねぇ?梢。」

「なーに?」


刺繍をしながらおばあちゃんが尋ねる。


「好きな人はできた?」

「…!」


―来た。

実はこの質問、おばあちゃんが毎週あたしに聞くこと。


「でき…」


いつも通り、「できてないよ」と答えようとしたあたしの頭をよぎったのは、小野チャンだった。


「あら?その反応は、できたのね?」


おばあちゃんが手を止め、にこにこしながら あたしを見る。
…あたしは嘘がつけないタイプなのだ。
そして、にこにこ笑うおばあちゃんは、実は意外と鋭くて、茶目っ気に溢れた人。

――こうなったら もう、腹をくくって全て話すしかない。


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