オープン・ステージ
2-2
 佳くんが指差す方へ視線を移すと、可愛らしい絵柄のマグカップコーナーがあった。

 二人でそちらへ歩きだす。


「ほら、これ」


 佳くんが手に取ったマグカップには、可愛らしい雷様が、雲の上から稲妻を発しているような絵柄が入っていた。

 思わず二人で吹き出してしまう。


「俊太に怒られるよ」


 私は少し下を向いて、笑いを堪えながら返した。


「だろうね。でもさ、これ三人で持ったら良くない?」

「サンダーだから?」


 あの日に決められたLINEのグループ名は、そのまま触れられることはなく、『サンダー(仮)』のままになっていた。


「安いし、どう? 三人であの場所で使おうよ。面白いし、俊太ともっと仲良くなれそうな気がする」


 そんなことを口にした佳くんは、とても楽しそうに笑っていた。


「まあ、プレゼントは質より気持ちだもんね。それにしようか」


 私たちは雷様のマグカップを色違いで三つ選び、落とさないように気を付けながらレジへと持っていった。

 一つはもちろん、プレゼント用にして。

 私たちはプレゼントを開けたときの俊太の反応を想像して、また少し笑ってしまった。

 駐車場で駐車料金を払い車に乗り込む。

 クーラーの風は熱風地獄だったけれど、無風の方が遥かに厳しいので、窓を開けて風量を最強にした。

 もちろん運転は私だ。

 市街地の大通りに出て車を走らせる。

 歩道の脇に植えられた緑の木々からは、強い生命力を感じた。

 夏休みということもあり、田舎とはいえ、平日でも町の中は混雑している。


「あ、そうだ。僕、飴を持ってきたんだよ。舐める? のど飴と、はちみつレモン味と、夏季限定のピーチ味。あ、ミントガムもあった! どれがいい?」


 私は少し考えて、夏季限定のピーチ味を貰うことにした。

 運転中の視線はそのままに、左手をハンドルから離して、助手席に座る佳くんへその手を差し出した。


「危ないから、はい」


 ふわりと桃の香りがしたと思った瞬間、佳くんの指先が、私の唇に触れた。
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