あなたとの距離
第16章 衝撃の告白

理沙にはっきり言おうって決意したのに、上手くタイミングが掴めなかった。

あの告白の翌日、理沙は何もなかったみたいに今まで通りで、ちょっとスキンシップが増えたのは気になったけど、それも仲の良い友達の範囲内。

理沙が私にくっついてくるのを見て、明日香が、「私もー」ってひっついてきて、周りは「あの3人仲良しだよねえ」って、ほのぼのした感じ。

なんか、ズルいかもしれないけど、これを壊したくないなって思って、返事を先延ばしにしちゃってるんだ。

このままでいられないのかな。
理沙は、恋人になりたいって言ってたけど、ずっと3人仲の良い友達でいたいよ。

立花さんも、あの日からなんかすごく上の空という感じで、こっちもアプローチしづらかった。

でも、その場で足踏みしてるような、停滞した状態は、意外な所からのアプローチで壊されたんだ。

その日、日直だった私は、もう一人の当番だった長谷川さんと、何となく流れで一緒に帰ることになった。

滅多に話した事もないし、私の中で何となく恋のライバルって勝手に位置づけてるのもあって、上手く話題が出てこない。

グラウンドの脇を通ると、部活中の立花さんの姿が見えた。
いきなり長谷川さんが私の手を引っ張るから、バランスを崩した私は、長谷川さんに抱きしめられてしまう。

「ちょっと長谷川さん!」
離してくれない彼女に抗議するけれど、何がおかしいのかクスクス笑って、
「めっちゃ睨まれてる」
と呟いた。

誰が?
って、どうでもいいけど、早く離して欲しい。

すると、背後から怒ったような立花さんの声が聞こえてきた。

「何やってるの?」

「見て分からない?抱き合ってるの。無粋なことしないでよ。部活戻ったら?」
長谷川さんは飄々とした口調で、とんでもない事を言う。

は?何言ってるのよ。

「佐原さんは嫌がってる風だけど」

「部外者に乱入されて恥ずかしがってるのよ。愛の語らいの途中なんだから、お邪魔虫はあっち行って」

誰と誰が?愛を語らってる?
言いたい事があり過ぎて、逆に声が上手く出ない。

「、、、イヤだ」
ぼそりと立花さんが呟く。
「佐原さんを離して」

「指図される覚えはないんだけど。私はさ、中学の時から、佐原さんがずっと好きだったの。奏なんて、高校に入って外見に惚れちゃっただけでしょ」

え、好き?長谷川さんが、私を?
立花さんが好きなんじゃなかったの?
って、ちょっと待って。
惚れちゃったって、なに?

「、、、どいつもこいつも」
立花さんの声は更に低くなって、顔を歪ませたと思ったら、こっちがビクッとする程大きな声になった。
「決めつけんな!薄っぺらな気持ちなんかじゃないんだよ。ずっと見てきたんだ。誰にも優しくて、何事にも一生懸命で。そんな佐原さんだから好きになったんだ」

長谷川さんが一瞬ひるんだ隙に、彼女を押し戻して立花さんの方を見る。

私と目が合うと、「やってしまった」といった顔で、みるみる顔を赤らめていった。

「へえ、へタレだと思ってたけど、言う時は言うんじゃん。ちょっと見直したよ」

立花さんは、くるりと踵を返してグラウンドに走り去ってしまった。

「はあ。今のナシ。やっぱヘタレだわ」

私の胸は、痛いくらいドキドキしてた。
好き?立花さんが、私を?

「良かったね」

長谷川さんの余りにも優しい声に、振り向いた。

「私が佐原さんを好きだったのは本当だよ。中学一緒の事すら知らなかったでしょ?」

「ごめん」
素直に謝る。
何故か記憶になかった。

「3年間クラス違ったし。今とは格好も全然違うしね」

長谷川さんは、ふうっと息を吐き出して続ける。

「一緒の高校に入ったけど、奏しか眼中にないのが悔しくってさ。奏にまとわりついたら見てくれるかなって」

それで立花さんにベタベタしてたの?
知らなかった。

「でも、奏もあなたに本気なの分かったからさ。見ててもどかしくなっちゃって。さっさとくっ付けってなったわけ。望みのない恋にすがるほど、落ちぶれてないから、私」

「いい人だね、長谷川さんって」
本心からそう思う。

「お幸せにね」
ヒラヒラ手を振って帰っていく彼女を呼び止めた。

「長谷川さん!」

くるっと振り向いた彼女に、心からの言葉をかける。
「好きになってくれて、ありがとう」

長谷川さんは、コクっと頷くと走るようにして帰って行った。
彼女の目に浮かんだ涙。
慰めてあげるのは、私じゃない。

今、私がすることは、ただ一つ。

立花さんが去っていった方を目指して、走り出した。


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