インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
「だったらその尚史って人に頼めば一番手っ取り早いんじゃないの?」

「頼むって何を?」

「そりゃあ結婚に決まってるでしょ。わざわざ知り合うところから始める手間も時間も省けるし、家同士の信頼関係も出来上がってるし、おまけに苦手意識がないんだから最高じゃない?」

キヨにもこれと似たようなことを言われた気がする。

あのとき私はキヨにどんな風に言葉を返したんだっけ?

たしか、『尚史とは小さい頃から一緒にいるから、付き合うとか恋人っていう感じじゃなくて、家族に近い』と言ったと思う。

そのときは本気でそう思っていたけど、今もまったく同じことが言えるのかと考えてみる。

幼馴染みとして誰よりも信頼していることは変わらないけれど、この1週間で尚史に触れられることにも少しずつ慣れてきたし、今まで知らなかった一面を山ほど見て、間違いなく私は尚史を男性だと認識したし、少しは意識もした。

だけどもし結婚するとなると、これまでとは関係が変わるわけだし、絶対にうまくいくとは言い切れないから、正直言うと築き上げてきたこの関係を変えてしまうのは怖い気がした。

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