インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
なんとか手探りで枕元にスマホを見つけて画面を開くと、尚史からのメッセージが9時過ぎから何件も未読のままになっていた。

「どうしたの?」

「無理……胃が痛くて起き上がれない……」

「そんなに痛むの?その様子じゃあ今日は無理そうねぇ……。胃薬持ってきてあげるから、ちょっと待ってなさい」

そう言い残して母が部屋を出たあと、枕に顔をうずめて痛みに耐えていると、誰かが部屋に入ってくるのを気配で感じた。

足音でその誰かが尚史だとわかる。

「モモ、薬持ってきたけど……そんなにひどいのか?」

涙のあとが残る情けない寝起きの顔を尚史に見られたくない。

私は枕に顔をうずめたまま、尚史の問いかけに黙ってうなずく。

「じゃあ新居探しはモモの体調が良くなってからにするか」

「うん……ごめん」

「体調が悪いのはしょうがないんだから謝んなくていいって。早く治るように、今日はゆっくり休んでな」

「そうする……」

私が力なく答えると、尚史は黙って部屋を出ていった。

これで今日は入籍の心配はなくなった。

それだけでほんの少しだけど胃の痛みが和らいだ気がした。

明日の仕事が終わったら、改めて尚史と話し合うことにしよう。


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