インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
いつもならこの時間には常連のお客さんが何人かいるのに、今日は開店から30分以上経っても誰も来ていない。

「今日はいつもよりお客さんの入りが遅いね」

「そんな日もあるよ。月末も近いし、みんな会社の付き合いとか残業とかで忙しいんじゃないか?」

そういえばいつもは定時で帰ることの多い尚史も残業だと言っていた。

ここでしか会わない人たちが昼間になんの仕事をしているのかなんてあまり知らないけれど、みんなそれぞれの生活があるんだな。

キヨは調理師の専門学校を卒業してから大手ファミレスチェーン店に就職したけれど、その会社のマニュアル通りの厨房での仕事にやり甲斐とか張り合いみたいなものを感じられず、もっと本格的な料理を提供する店に移ろうかと思っていたときに、父親が事業を拡大すると言って開いた2号店であるこの店のマスターを引き受けた。

ファミレスに勤めていた頃に比べて、この店のマスターになってからのキヨは生き生きしている。

子どもの頃には私たちと一緒にゲームばかりしていたのに、高校生になったあたりからキヨは急激に垢抜けてやたらとモテるようになった。

これまで付き合った女の子はたくさんいたようだけど、1年ほど前から付き合っている瞳さんは今までの人とは違うらしい。

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