インスタント マリッジ～取り急ぎ結婚ということで～

私がそう言うと尚史はうつむいて、私から離した手を固くにぎりしめた。

「関係ないって言われるの、責められるよりつらいな……」

どういう意味だろう？

付き合ってもいないときの女性関係を責めたって、お互いにとって意味はないと私は思う。

だいたい健全な大人なら誰にだって、恋愛経験とか異性との関係なんか当たり前にあることだろうし、初めて付き合って結ばれた者同士が結婚する方が珍しいことなんじゃないだろうか。

『酔いに任せて初対面の異性と一夜を共にしちゃった！』とか、『好きでもなんでもない都合のいい相手との肉体関係をズルズル続けているんだよね』なんてことも、ちょっと大人向けの漫画ではありがちなことだ。

現実でも大人ってそんなものなのかと思っていたけど、そうじゃないっていうこと？

だけど尚史は、一度きりの過ちならともかく、水野さんのことを好きでもないのに関係を続けていたんだよね？

いくら私でもそんなことを尚史の口から聞かされるのは気持ちのいいものではないし、どんな経緯があってそんな関係になったとか、どんな風に水野さんを抱いたなんて、できれば聞きたくない。

「だったら尚史は私にどうして欲しいの？」

「ごめん、俺がモモを責められる立場じゃないよな。今の忘れて」