インスタント マリッジ~取り急ぎ結婚ということで~
今日はスタイリストさんが化粧もしてくれるので、『できればノーメイクで来てください』と言われているから、出掛ける前に化粧をする必要がなくて助かった。

急いで顔を洗っていつも通りの簡単なスキンケアを済ませ、髪をとかしながら何を着て行こうかと考える。

タンスの引き出しを開けて数少ない自分の服を見たけれど、ロクな服がない。

いくらドレスに着替えると言っても着古した普段着で行くのはみっともないし、かと言って、通勤用の地味なスーツで行くのもおかしい気がする。

「うーん……あ、そうだ」

独り言を呟きながらクローゼットを開けると、尚史に選んでもらったあの服が、今か今かと次の出番を待っていた。

この服を買った本来の目的だったはずの八坂さんとのデートはなくなったし、尚史とシーサイドガーデンに行ったときに一度着たきりで、再び着る機会がなかったのだ。

これまではずっと家に籠って漫画を読むかゲームをしているかのインドア派だったから服装にはこだわりがなかったけれど、これからは尚史とデートするときのためにも、季節に合わせたよそ行きの服をいくつか持っておいた方がいいな。

そのときはまた尚史に選んでもらおう。

< 691 / 732 >

この作品をシェア

pagetop