W Love ダブルラブ~イケメン双子に翻弄されて~
ソファーに近寄り全貌を見ると、顔に本を広げてかぶせてあり、Tシャツスウェット姿で何も掛けずに寝ている。
テーブルには数冊の本とウイスキーのボトルとグラス。
本を取り上げ、あどけない顔で寝ている社長ちょっとドキッとしながら、揺さぶるけどなかなか起きない。

「社長ってば!こんなところで何も掛けないで寝てたら風邪ひきますって!っていうか起きてください!」

「う~・・ん・・・」

も~っ毎日これなんだから!

「しゃ~~~ちょ~~~~!」

耳元に近づいて大声で叫ぶ。

「んん~は~い、おはよ~う、しずかくん」

半目を開けてぼーっとした顔で起き上がる社長。
うつらうつらまた寝そうな雰囲気に、また寝ないように肩を揺さぶる。

「社長ってば!また夜更かししましたね?ちゃんと起きてください!会社遅れますよ!」

触った肩が冷たい。いくらもうすぐ夏だからって、ほんとにこれじゃ風邪引いちゃう。

「社長、体冷えきってますよ!早く起きて熱いシャワーでも浴びて体温めてください!その間に朝ごはん用意しますから!」

「う~ん、はあい」

ふわわわ~っと大あくびをかいて立ち上がり、静香の頭をポンポンと撫でた。

「いつもありがと、静香くん。でも、社長は止めてね?はい、僕の名前は?」

「きょ、梗月さん……」

「よろしい」

名前を呼ばれ満足したのか、気だるげな目でウインクしてリビングを後にする。
寝癖のついた後ろ姿を見送った静香はソファーの前に立ち膝をしたまま固まっていた。

何なのあれ?頭ポンポンの上にウインク!?朝から心臓がもたないよ…。

社長と呼ばれるのがなぜか嫌い。
だから梗月さんと呼んでいるが仕事は呼び名からきちんとしないと!と思うのに…。
じゃないと勘違いしそう…。
もう2年もこうやって起こしに来てるのに不意に見せる表情にドキドキして未だに馴れない。
胸に手を当て心臓の高鳴りを余計に感じ、慌てて頭を振って立ち上がった。

「これは仕事!朝ごはん作らないと!」

本を整え、ウイスキーのボトルとグラスを片付けて冷蔵庫を開け食材を出す。
いつの頃からか、朝の弱い社長を見かねて起こしに来るようになり、食事も忘れて仕事や趣味の本を読みふけるから、朝食の用意までするようになった。
夜ご飯は昼間ハウスキーパーさんが来てくれて、掃除と夕飯を作って置いてってくれるらしい。
買い物もコンシェルジュのいるマンションだから頼めば行ってくれる。
いたせりつくせりな生活に私まで加わって、今の社長は家と会社の往復でほぼ引きこもり。
仕事してるか本を読んでるかどちらかしか見たことがない。

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