身代わり令嬢に終わらない口づけを
 いや、自分が受け止めてはいけない。そうわかっていても、熱を含んだ彼の眼差しに見つめられると胸には嬉しさがあふれてくる。

(あの熱は、お嬢様に捧げられるべきもの。わかっているわ。決して私……ローズに対するものではないのよ)

 そしてまた苦しさに胸を痛める。そんなことを最近のローズは繰り返してばかりいた。


「一緒に行くか?」

「え?」

 レオンの問いかけに、ローズは顔をあげる。

「今日はこれから施設の方へ行くことになっている。気になるのなら、一緒に、行くか?」
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