身代わり令嬢に終わらない口づけを
第二章 あふれかえるお菓子とお花
 ちちち、と小鳥の声がする。カーテンの隙間から漏れる光が、まぶたの裏に明るい。

(今日も天気はよさそうね)

 まだ寝ぼけている頭でローズは体を起こそうとするが、なんだかやけに疲れていて体がだるい。もう一度シーツに顔をうずめようとしたローズは、その明るさがすでに朝も遅いことを示していることに気づいて瞬時に目が覚めた。

「大変! 寝坊を……!」

 あわててとび起きて目にした光景に、ローズは、目を瞬く。

 やわらかな真っ白いシーツに、幾重にもレースが重なった天蓋付きのベッド。部屋に漂う甘い香りは、花瓶に活けたバラの花束から立ちのぼる。細かい彫刻を施された豪奢な家具に囲まれて、ローズはまだ夢を見ているのかと錯覚した。

「ああ……」

 数回の瞬きの後に自分の立場を思い出したローズは、くたりとベッドの上に突っ伏す。

(そうだった。ここは公爵家だっけ)
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