身代わり令嬢に終わらない口づけを
「いえ、少し寒くなってきたので中でいただくわ」

「かしこまりました」

 ソフィーがワゴンを押してサロンに入るのに続きながら、ローズはちらりと庭を振り返る。やはり、かさりとも動く気配はない。

「さっきのトラヴェルソは……」

「奥様? 何かおっしゃいました?」

 お茶のカップを用意しながら、ソフィーが振り向く。

「いえ、なんでもないわ」

 ローズはサロンに入ると、庭に続く窓を閉めた。


「誰だったのかしら……」

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