可愛い上司
「俺はだいたい、辛いものが嫌いなんだ。
なのにキムチ鍋とか」

ぼそぼそと話し出した課長に、周囲の人間が凍り付く。
今日の送別会のメイン料理はキムチ鍋。
一応、好き嫌いが分かれるものなので事前に皆に聞き、嫌いな人間はいないということでこれになったのだけれど。

「そもそもあれだよ、俺が甘いもの食ってるところが想像できないとか。
悪いか、俺は甘いものが大好きなんだ」

……えっと。
誰も一言も、そんなことを言っていないのですが。

ああ、確かに課長が赴任してきてすぐのころ。
コーヒーはブラックでいいですか、って聞いた子がいましたが。
別にそこで砂糖ミルクをご所望されたって、問題なかったですよ?
なんですか、トラウマになるようなことがあったんですか。

「しかも勝手に酒が飲めると思われて、どんどん飲まされるし。
あとが大変だから嫌だっていうのに」

そう言いながらも、課長はビールを口に運ぶ。

「……踊る」
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