ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
会社には直帰の連絡を入れ、私はマンションに帰ってきた。
とても仕事できるような状態じゃないって思ったから。
おぼつかない足取りで室内に入り、静まり返ったそこを見回せば……
シンクは空っぽ、キッチンは整然としたままで、少し心配になる。
ライアン、今朝ちゃんとご飯、食べていったのかな。
こういう時、同棲してると不便だ。
数時間後には彼と、どうしたって顔を合わさなきゃならない。
一体どんな顔で「お帰りなさい」って言えばいいの?
そのままとぼとぼと、力の入らない足でリビングへ向かった。
――私はライアン様を昔から知っておりますが、これほどあの方が執着した女性は、あなたが初めてです。あなたを本気で愛しているのは、事実でしょう。ですが、ご両親のことも、とても大切に思われている。特にジエン様は、ライアン様にとって父親というより命の恩人、それ以上の存在であることを、ご理解いただきたいのです。
そういった時初めて見せた、張さんの苦しげな表情を思い出しながら。
私は飾り棚に手を伸ばした。
そこに所狭しと並んだ、フォトフレームの一つを取り上げる。
家族でキャンプに行った時なんだろうな。
川べりにはったテントを前に写ってる一枚。
やせっぽちのお義父さんの背中に、大型犬みたいにのしかかって、くしゃくしゃの笑顔を見せるライアン。げっそりしたような微妙な笑顔で、弱弱しくピースサインするお義父さん。
その脇で、お義母さんが爆笑してる。