ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】
13. ミーティング~飛鳥side

「日経? 相変わらずワーカホリックだな」

追っていた記事に影が落ちて顔を上げると、呆れ顔の雅樹が覗き込んでいて。
バサバサっと新聞を折りたたんだ。

「雅樹、なんでここに?」

私が待ち合わせしてたのはラムちゃんなんだけど……とカフェ内を見回しても、まだそれらしき人はいない。

やっぱり少し早く、着きすぎたかな。

「カレントウェブに打ち合わせなんだろ? 俺も呼ばれてて。前の現場から直行したからさ、時間つぶししようと……ここ、いいか?」

「もちろん」
と答えて。
向かい側の席に置いていたスプリングコートとかばんを、彼のために動かした。

「その後、彼氏……っていうか、元カレとはどうだ?」

びくんと跳ねた鼓動を気取られないように目を伏せ、素早く息を整える。

「特に何も……ごめんね、いろいろ迷惑かけちゃって」

「いや、俺もお前には散々やらかしたから。これで貸し借りなしな」

おどけるように口角を上げた雅樹に、感謝しながら笑い返した。

先週末の夜、カレントウェブから飛び出して……それっきり。
ライアンがどうなったか、私にはわからない。
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