ガラスの靴は、返品不可!? 【前編】

「だいぶ社内でも意見は分かれました。どれもすごくいい出来で、食べてみたいものばかりで」

カラーでプリントアウトされていたのは、色とりどりの料理写真、そしてレシピ。

「うわぁ、これ、おいしそうっ」
「すごい、ほんとにこれ、素人が作ったんですか?」

凝ったメインディッシュはもちろん、シンプルなサラダ系やスイーツもあり……感嘆の声が漏れてしまうほど、レシピも見た目も、完成度の高い作品が並んでいた。


年末からすでに動き始めている今回のキャンペーンは、「ソルティハーブ」というシーズニングソルトの販売促進を狙ったもの。

ウェブを通じて、一般の人に商品を使ったオリジナルレシピを考えてもらい、優秀作品を決定する、という内容だ。

レシピ公募自体は、年明け早々に終了していて。
オオタフーズ側には、紙ベースでの一次選考をお願いしてあった。

その結果を受けて来週、最終選考会が行われるんだけど、今日はそれにむけてのミーティングなのだ。


「20品もあるんだぁ!」

紙を数えていたラムちゃんが、横で「げ」とつぶやく。
こっそり脛を蹴っておく。「イタ」

まぁ、気持ちはわかる。
最終選考会ではこれらをすべて実際に作って、試食することになってるから。

樋口さんも「すみません」と申し訳なさそうに頭をかく。
「もっと絞れたらよかったんですけど、意見がまとまらなくて」

「いいいえっ! 全然平気です! あたし、こう見えて結構食べる方だし! 20でも50でも、任せてください!!」
得意げに胸を叩くラムちゃん。

あぁ、この子が一人前になるまでに、一体いくつ穴を掘って入らなきゃいけないんだろう……

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