ヴァンパイアRose
♰プロローグ♰
ここは…どこ?



赤い満月の夜、私は目が覚めたら見たことのない場所にいた。



私が家にこもっている間に周りが変わったのか?と思ったけど、そんなはずはない。



だってそこには…



大きなお城のような屋敷があったんだもの_。



こんな夜遅く尋ねたりしたら迷惑だよね…。



だからといってどこかもわからないところで野宿するのは気が引ける。



コンコン



私は勇気を振り絞って大きなお城なのか屋敷なのかいまいちわからない建物のドアをたたいた。



……。



なんの反応もない。



私は気になり近くの窓を覗く。



ちゃんと人は中にいた。



む、無視…ってこと?



気づいていないならそれでいいんだけど、無視なのかな…。



コンコンコン



私はもう一度ドアを叩く。



中の人は動かない。



ガーンッ…。



ね、寝てるの…かな?



なんとかプラスに考えるようにはするけど、自分の考えを認めることができない。



こ、これで最後。



無視されたら他のところに行ってみて何かないか…。



コンコンコンコンコンッ



お、お願い…出て!!



ガチャッ



やっと扉が開いた。



私が顔を上げると、男の人がいた。



「えっ…」



赤い艶やかな髪、整った顔立ち、切れ長の目…。



かっこいい人ではあるけど、男の人…。



私は、“あること”がきっかけで、男の人が苦手になったのだ。



ど、ど、ど、どうしよう!?



男の人なんて聞いてない!!



だからといって女の人って言う保証も無かったけど…。



私はまた下を向いてしまう。



「なんなんだ、こんな夜遅くに…。



編集者かと思ったが違ったようだな。」



へ、編集者…?



私がキョトンとしていると、赤髪の青年が言った。



「俺のこと、知らないのか??



それとも、俺のファンで知らないふりでもしてるのか?」



「も、申し訳ないのですが…ど、どなた…でしょうか…」



私は下を向いたままそう言った。



チラッと顔を見ると信じられないっ!と言った表情で私をみていた。



「ほ、本当…か…」



そう聞き返されたけど、全く知らない。



こんなイケメン、知っていたら忘れるはずもないし。



「俺はアレク。小説家だ。



趣味で書いてただけなのにな…と言っても締め切り、締め切りってうるさいんだよ…はぁ」



初対面の私にいきなり愚痴を言う。



そんなの知らないよ…。



「まぁいい。お前は?」



「わ、私は…あ、綾瀬 樹里です。」



「ほぅ、樹里。



で、俺に何のようなんだ。」



「え、えっと…」



なんて説明しよう…。



目が覚めたらいきなりここにいましたなんて、言えないし…。



「あ、あのですね…」



こんなんじゃ怪しい人だと思われてしまう。



まぁ、夜遅くに尋ねている時点で怪しい人だろうけど…。



「その…」



私が戸惑っていると、



「嫌なら言わなくていい。



見たところ、訳ありみたいだな。」



その言葉を聞いて、助かった。



…よかった。



「は、はい…実は…。」



わけありと言えばわけありだもの。



「ここだと寒いだろ。



ほら、入れ。」



そう言ってアレクさんは私を家の中に入れる。



あ、あったかい…



今の季節は冬だ。



外はほんとに空気がひんやりしていた。



優しい人でよかった。



もしかしたら、こんな寒い中野宿になっていたかもしれないもの。



「ここに座れ、あったかいだろ」



私は暖炉の前の椅子に座った。



「ご、ご親切にありがとうございます。」



こんな怪しい私なんかを家に上げてくれるなんて……。



どうせ追い出されると思っていたりしたから嬉しい。



でも、私としてもなぜここにきたのかわからない。



私は頭の中を整理しようとする。



まず、私はいつものように引きこもって生活していて…。



お母さんに少しは外に出ろと家を追い出されて、久しぶりに外を歩いていて…。



人通りが少ない道を選んで歩いていたら……。



…そうだ!途中でいかにも怪しい建物を見つけて、



お悩み相談とか書いてあってなんとなくそこに入って…



そこで出会った謎のお姉さん。



紫色のふわっとした長い髪、雪のような白い肌…。



そのお姉さんに言われた。



「そんなに嫌なら、他の世界へ行きましょうか…」と。



その時はこの人は何を言っているのだろう?と思った。



アニメの見過ぎか何かではないか、なんて思ったりもした。



でも、今になってわかる。



今私がいる世界は今まで私がいた世界とか異なる。



「好きなだけここにいろ。



出て行きたいというなら、教えてくれ。



無断でいなくなられては困るからな。」



……え?



「す、好きな…だけ?



い、いいんですか!?」



嬉しい気持ちと同時に、男の人の家にお泊まりだなんていいのだろうかと思ってしまう。



でも、今はそんなこと言ってられない!



このチャンスを逃したら野宿になってしまう。



それも全く知らない世界で、だ。



「お世話になります!」



私はペコッとお辞儀をする。



「フッ、礼儀正しいやつだな。



よし、今日はもういいが、明日から仕事を与えよう。」



「仕事…?」



一体なんだろう。



まぁ、ただで泊めてもらうのは私としても申し訳ないから、何かあるとありがたい。



「編集者が来たら言ってくれ。



即座に逃げる。そして、そいつを家にあげるな。」



は、はぁ…



つまり、編集者を追い出せということだろう。



簡単…というか、編集者さんに申し訳ないような…。



「とは言っても顔がわからんと意味がないな。」



そう言ってアレクさんが取り出したのは一人の女性の写真。



女性というか、女の子?



歳は同じぐらいだろうか??



背中あたりまである赤髪の長いツインテール。



エメラルドのような瞳。



小さな顔。



可愛いとしか言いようがない。



「随分と可愛い方ですね。」



ついうっかり私がそう口にすると、



「見た目だけだろ、中身なんてうざいだけだ。」



は、はぁ…



「ほら、お前はもう寝ろ。



空いてる部屋はいくらでもあるしな。



ついてこい。」



私はアレクさんに言われるがまま階段を上っていく。



高級そうな雰囲気が漂っている。



アンティークのような感じで結構好きだなぁ。



「ここがお前の部屋だ。



好きに使え。」



そう言って私が案内された部屋は階段を上がって右に曲がって突き当たりの部屋だった。



私は恐る恐る扉を開ける。



「わぁぁ」



そこはとても広い部屋で、ベッドもレースがついていて、お姫様が住んでいそうな部屋だった。



天井にもシャンデリアがある。



「こ、こ、こんなにも素敵な部屋…私なんかが止泊まっちゃって大丈夫なんでしょうか…?」



私なんかが泊まるにはもったいない。



もっとこじんまりしていてボロボロでも十分だ。



「というか、アレクさんって、男性なのにどうしていかにも女の子らしい部屋があるんですか?」



私は思ったことを口にした。



「そ、それは…だな…」



アレクさんの顔が少しずつ赤くなる。



「父上と母上が、妻の部屋と言って用意した部屋…なんだ…。」



…つ、つ、つ、つ、つ、妻!?



「あ、安心しろ、お前はそんなの無視していて構わん。女の部屋なんてなかったからな、ここしか。」



「そ、そんな…アレクさんの未来の妻さんが暮らす部屋に私が泊まるなんて、やっぱりできません!」



「じゅ、樹里…」



「あっ、ご、ごめんなさいっっ」



ていうか、私…アレクさんと普通に話せてる??



「アレク…」



すると隣の部屋の扉が開いて金髪の少年が出てくる。



!?



「あんた…誰?」



私をジロっと見ていかにも怪しいと言った様子だ。



「え、えと、私は綾瀬 樹里です。



これから、お世話になります!」



「こんな夜遅くに来るとか…あんたの頭どうかしてんの?ただの迷惑なんだけど、ていうかなんで僕の部屋の隣なんだよ…。



アレク、僕部屋移っていい?」



わ、私…嫌われてる…!?



まぁ仕方ないよね…



「何言ってんだ、お前は…。



ほら、樹里も部屋に行って寝ろ。



また明日の朝挨拶すればいいしな。



おやすみ。」



そう言って私はほぼ無理やり入れられた。



「あ、は、はい。」



…アレクさん以外にもいたんだ。



さっきの人、ものすごく怖かった。



会った瞬間頭どうかしているって……。



ボフッ



私は布団にダイブする。



荷物とか、何にもないからな…



パジャマとか着替えがないってことになるよね…。



明日アレクさんに頼んで買い物に行かせてもらおう。



私は目を閉じて眠りについた。





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