ラブレター【完】

それにしても、この黒板どうしよう。

消してしまったら『雨だれ』さんの手がかりが何もなくなってしまう。

もしかしたら筆跡から、『雨だれ』さんに辿り着けるかもしれないのに。

でも、このままにしておくわけにもいかないし。

……あーあ、せっかくもらったラブレターなのにな。

もう一度ゆっくり読み返してから、黒板消しを手にして文字を消し始めた。

宛名の「鈴木理奈様」の文字は、結構高い所に書いてあって、ちょっと背伸びをして消した。

わたしの身長は155センチ。

目測だけれど、少なくともわたしより10センチくらいは背が高い人だということがわかった。

でもそんな男子、いっぱいいる気がする。

わたしより10センチ以上背が高くて、わたしがここでピアノを弾くのを知っていて、尚且ショパンの雨だれという曲名を知ってそうな男子……。

やっぱり見当つかない。

『雨だれ』さんについては、これ以上考えてもわからないし、もしあのラブレターが本気なら、またあちらから何かアクションがあるかもしれない。

わたしは『雨だれ』さんが誰なのか考えるのを一旦諦めて、当初の目的を果たすことにした。
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