ラブレター【完】

3年生まで全クラスの発表が終わり、集計が始まった。

わたし達生徒は、自分の学年以外の発表に対して、学年それぞれいちばんよかったクラスに投票をするのだ。

それを集計して、各学年の優勝が決まる。

その集計を待つ間に、わたし達吹奏楽部は壇上に上がって演奏をするのだ。

クラリネットは何か決まりなのか、なぜかいつもいちばん前の列だ。

一応ファーストのわたしは、3年生に混じって最前列の端から3番目に座る。

顧問の香織先生が、指揮棒を掲げた。

アフリカンシンフォニー。

いかにもアフリカなパーカッションから始まるこの曲は、目を閉じると広大なサバンナが目に浮かぶ。

逞しい、そして美しい弱肉強食の大自然。

クラリネットの奏でる美しいメロディは、サバンナを駆け抜ける風のよう。

星川先輩達トロンボーンが鳴らす音は、まるで動物の鳴き声のようだ。

わたしは吹きながら、サバンナを駆けるライオンの背に乗ったような錯覚に陥る。

気持ちいい解放感。

まるで、プールの中みたい、と思う。

水の中は、わたしを全てから解き放ってくれる。

スイミングで練習の合間に、無になってぽっかりと浮かんでいるのが好きだった。

そんな時、同じコースだったともちゃんはよく、ふざけてわたしの足を水中から引っ張ったりした。

怒っておっかけっこになって、コーチによくお説教されたっけ。

懐かしいなあ。

……あれ、わたしサバンナにいたはずなのに。

どうしてともちゃんのことなんか考えてるんだろう。
< 37 / 90 >

この作品をシェア

pagetop