ラブレター【完】
5:期限は木曜日

今日は朝から雨。

ママが「今日から梅雨入りだって」と言っていた。

そういえば、梅雨ってどうして梅の雨って書くんだろう。

博識な透くんなら知ってるかしら。

あとで聞いてみよう、忘れなかったら。

基本的に、わたしはとても忘れっぽいのだ。

パパはすごく頭がいいのに、どうして似なかったんだろう。

顔もママみたいに美人じゃないし、わたし本当に鈴木家の娘なのかしら。

でも実は、目元やくせっ毛はパパにそっくりだし、声はママにそっくりだ。

つまり、これぞ遺伝の不思議、というか遺伝の罠。

……なんてくだらないことを考えながら、雨の中をぼけーっと歩いていたら、大きな水溜まりに足を突っ込んだ。

朝から最悪だ。

歩きながら薄々気づいていたけれど、昇降口に着いて靴を脱いでみたら、やっぱり靴下までぐっしょり濡れていた。

しかも片方だけ、尚更気持ち悪い。

あーあ、朝から本当に最悪だ。

それでなくたって、わたしは今大きな悩みを抱えていて大変だというのに。

好きな人が2人もいるなんて、やっぱりわたしは頭がおかしいのかもしれない。

ため息をつきながら、上履きに履き替える。

上履きの中は左足だけべっちょり冷たくて、またため息が出た。
< 46 / 90 >

この作品をシェア

pagetop