最上階ロマンス
序章 ――告白――
「瑞希ちゃ~ん! 来てくれたー! 嬉しいっ!」

と、満面の笑顔を浮かべる…。。真っ白なウェディングドレスを身に着けた瑠樺が、瑞希や悠の方に小走りでかけてくる…

が。。

「こら、走るなっ!」

そぅ、すぐさま、その腕を掴んだ…長身の男性…

その男性は、微かに頬を引き攣らせている…


今日は、瑞希や悠の同級生で友人の瑠樺の結婚式。。

6月の晴れ渡った今日…、瑞希は見事…に先を越されてしまっていた…

結婚披露宴と言うか、パーティが式場の庭園で行われる…のは、花嫁の瑠樺のたっての希望…。。夏の日差しのような明るさのある瑠樺にピッタリなシチュエーションだ。。

腕を捕まれ…、静止させられた瑠樺の代わりに、瑞希は瑠樺の傍まで駆け寄り…

「身体、大丈夫?」

と、挨拶そこそこ…に、瑠樺の身体を気遣う…

「うん! つわりも軽いみたいだから~! みんな、心配してくれるんだけどね~!」

そぅ、変わらない屈託のない笑顔を見せる…。。瑞希は、内心【そりゃ、そうでしょ? 変わらずに走り回ってそぅなんだもん】と、思ったが…口に出せない。。

「成宮くんも来てくれた~! 嬉しい!」

「まさか…、瑠樺が母親になるとはな…。お前、子どものこと、忘れて走り回りそうだもんな…」

と、瑞希が思ったことを、悠はそのまま…口にした。。その悠の言葉に瑠樺は変わらず…笑いながら…

「え? 忘れないよ~! たまにはあるけど。。」

そぅ、笑顔を向ける瑠樺に…、その場にいた3人は、【絶対! 忘れてる】…と、思ったことは言うまでもない。。



「成宮、お前ら、相変わらず?」

そぅ、先程、瑠樺の腕を引き止めた男性は、パーティ前に、悠を呼び寄せ…すでに、ワインを口にしている…

「漆原、何が…?」

と、その青年から手渡されたグラスを受け取りながら…、悠は微かに頬を引き攣らせていた…

話をはぐらかそう…とする悠に、琢磨は、悠を軽く睨みつけながら…

「瑞希ちゃんと! お前ら、何年? 付き合って…一緒に暮らして…」

「…あ~…っ。5年…かな?」

予想…をしていた台詞に、聞き流そう…とした。。が、琢磨は、悠に真摯な眼差しを向けている…

「結婚しないの?」

「……っ」

一瞬、無言を貫いた悠に…

「まだ、気にしてるのか…。あのこと…」

と、グラスのワインを流し込む…

【あのこと】…とは、5年前のことを指している…。。敢えて言わなくても悠には解っていた…

「姉さんとは?」

「たまに、実家に行ったら会うけど。特には…」
《姉の奈都子は、あの後から…ほとんど外に出ることはなくなった…

実家に行けば…、少し…会話をするくらいだ…

以前…のように、激しい一面を見せることはなくなった…が、相変わらず…精神的に不安定だと聴く…》

「お前さ、あの姉さんがあぁなったのは、お前のせいじゃないよ。
あの人の心の問題だろ? 気を使うこと、ないんじゃないか?」

「……」

再び、言葉を選ぶように…、無言となった悠に…琢磨は、重苦しいため息を1つついた…

【そうは言っても…そぅ、簡単な問題じゃない】…と、言いかけた言葉を、悠は飲み込んだ…

姉の奈都子が、あぁなったのは、少なからずとも…原因は自分にある…のは、事実だ。。

「お前が、思っているよりも…少しずつでも前に進もうとしてる。そりゃ、人より遅いかもしれないけど…
お前が前に進もう…とするのが、姉さんの励みにもなるような気がするけど…」

その言葉に、琢磨の方に視線を向けた悠は…【なぜ、コイツにそういうことが解るのか…】と、疑問符ばかりが浮かんだ…

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