恋愛境界線
「そんなの、私に”来て”って言えば良いのに」

「悪い」

けどそういうところ、不器用で可愛いなあ。
母性本能をくすぐるって、こういうことなのかな。
それが隼人さんの魅力なんだよね。


「…けど、言われなくても私は来るつもりだったんだけどね」

「…え?」

あんなに素敵なものをもらって、私が何も用意しないわけがない。
て、いうかもともと今日の学校帰りに買いにいくつもりだったんだけどね。

「はい」

スクールバックからブルーの包装紙に包まれた細長い四角い箱を取りだし、隼人さんに手渡す。

「これは…?」

「開けてみて」

私がそう伝えると隼人さんは、包装紙を止めているテープを丁寧にはがし、包装を解いていく。



「ネクタイ、か?」

「高いものじゃないんだけれど、絶対隼人さんに似合う!って思って」



親からもらったお小遣いを崩して買った。
大人の隼人さんにしたら、たった8千円の安物のネクタイ。

買う前に思った。
自分の稼いだお金で買いたかった。

けれど、受験生の私はアルバイトなんてする余裕なんてなくて。

悔しい。

それが私の本音ーーーーー




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