恋愛境界線

転校して2週間が経った。
私は放課後になると、教室を出て社会科準備室に向かっていた。
今日締め切りの課題ノートを先生に提出するためだ。

先生の捻挫も回復して、ここ数日で普通に歩けるようになっていた。

今日で私の雑用係の役目も終わり。
終わっちゃうのかー…

って、違う違う!

やっと解放される!

の間違い!

別館3階。
社会科準備室の扉前で私は呼吸を整えてから、ノックをして扉を開ける。

「失礼します」

私がそう声をかけると、奥から先生が顔を覗かせる。

「おう、赤坂。課題ノートの提出?」

「はい。しーちゃん…藤川さんの分も預かってます」

「わかった」

私は先生に2人分のノートを手渡す。

「…」

すぐ去ればよかったものの、出ていくタイミングを逃して先生との間に気不味い沈黙が流れる。

「…足、治りましたね」

私は先生の左足を見下ろしてそう呟く。

「ああ、もうすっかりな」

「もう私は用なしですね。せいせいします」



あ。駄目だ。
寂しいなんて。

そんなわけない。
そんなわけないのに。

「…じゃあ、失礼します!」

私はドアノブに手に手をかけたとき、後ろから先生が左手で扉を押さえる。

まるで後ろから壁ドンされてるような状態でになり、私の鼓動が一気に加速する。
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