恋愛境界線
こうやって会うようになってしばらく経って、俺は聞いてみた。
『なあ、先生』
『何?』
『もう、先生のお兄さんと付き合い出して1年経つよ』
『…だな』
『続いてるよね』
『まあ、兄貴は僕と違って真面目でちゃんとした男だからな。心配ないよ』
先生は遠くを見つめながら、笑った。
まだ雪花のこと、好きなんだってわかる。
『…このままでいいの?』
『ああ』
『まだ好きなんだろ』
『そうだよ』
『俺から奪ったように、奪えば良いじゃん』
『いま2人は幸せなんだよ。見たらわかる。壊せないよ』
『でもたぶん、雪花は…』
“先生のことが、まだ好きなんだと思う”
そう言いかけて、言葉を飲み込む。
『僕じゃ、泣かせてばっかりだから。
兄貴と一緒にいるほうが絶対幸せだよ』