恋愛境界線
「…私、知っちゃったんだ」


「何を?」


「先生が”私”を好きじゃないこと」


「は?」


奏はぎょっとした顔で私のほうを見る。


「なに言ってるんだよ。
あんなにはっきりと”好きだ””渡さない”って俺は言われたんだぞ。そんなわけないだろ」


「…見ちゃったの」


「何を?」


「写真。先生の高校の卒業式の写真」


「それがどうしたんだよ」


「女の子と一緒に写ってた」


「先生だって大人なんだから、何人かとは付き合ったことあるだろ。やきもちか?」


「そうじゃない。そうじゃなくて…その女の子が…」


写真のことを思い出して、また涙が溢れて頬を伝う。
顔を両手で覆って私はうつ向く。


「無理すんなよ」


「うん…大丈夫」


私は涙を拭って大きく深呼吸をする。



「見たとき、私なのかなって思った」



「?…どういうことだ?」



「私が写ってるのかなって思った。私とそっくりの女の子だった」



「…本当か?」



「うん」



私はもう一度涙を拭う。
奏はそんな私を黙ってみつめる。

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