行き着く先は・・・甘い貴方の檻の中?
「先程は失礼しました。何のリサーチもせずに、思い付きでアクションを起こしてしまったのはこちらの失態です。お怒りはごもっともですが、改めてお詫びをさせて下さい。申し訳ありませんでした」

一転して真摯な態度を示す南條を、さくらは意外だと感じていた。

しかし、相手が非を認めたのなら許すのが礼儀だ。

「いえ、頭をあげてください、南條さん。私も少し、いえ、かなりキャラクターに意識を乗っ取られてしまっていたので失礼な態度になってしまいました。ごめんなさい」

さくらも素直に頭を下げる。

これには、南條も、廣瀬も驚いていた。

「さくらは、のめり込むとその世界に入り込んじゃうんです。今日なりきったキャラクターのゲームもかなりやり混んでたし、お客様を喜ばせるために、数日前からその役柄にもなりきってて話し方も少し変だったんですよ」

そう、さくらは

「・・・っつうの!」

なんて普段は絶対に言わない。

「つまんない」

だって、俺様S系バンパイヤの口癖だ。

「じゃあ、昼間に我々が接した人物は別キャラってことですか?」

「もちろん。あんなSキャラとかアイドルキャラが上司にいたらみんな不安になるでしょう?」

クスクスと笑う二人は、普通の20代会社員だった。

「だけど、ビジネスに馴れ馴れしさは禁物ですよ。特に女性には警戒もしくは軽蔑されますからね」

少しだけ真剣な顔で、南條を嗜めるさくらは、経営者の顔になっていた。

この女性は、一体いくつの顔を持つのだろうか?

南條は、本当の彼女に少しずつでも近づきたいと、柄にもないことを考えていた。


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