果報者
この仕事をして
初めて作り笑いをした。



心から笑えへんことに
必死に笑った。



冗談をたくさん言った。



いつも以上に
1人の時間を減らした。


そうせんと
壊れてしまうから。



すぐに涙が邪魔しようとするから。


みんなに気付かれんように
悟られんように



やのに






「紺ちゃんなんかあったやろ。」


「へ!?」


「なんか不自然やし無理してる。」






斗に気付かれてしまった。



一度痛んだ心は
ほんの少しの安らぎで
たった一言の優しさで




簡単に声を荒げてしまう。




我慢してた涙も
作っていた表情も



一瞬で音を立てて崩れてしまう。
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