現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
「私だって当然考えたわよ。どこかの大貴族の家で司書の見習いを短期間お願いできないかしらって。でも司書を雇ってるような図書室を持ってる方なんて知り合いにいないもの……」

この国で司書を雇わねばならぬ程の図書室を持っているのは、よほど歴史の古い名門の貴族か事業で莫大な富を得た実業家くらいだろう。それ以外の家は執事が管理しているか、図録を作るときにだけ経験を積みたい学生を雇うくらいのものだ。
もちろん、中流貴族のシーモア家にはそんな血縁者も知り合いもいない。

「いや、僕の大叔父の家ならきっと大丈夫だと思うんだ」

「大叔父?」

突然の話にグレースは驚きに大きく目を見開いた。ゴドウィル伯爵家だってグレースの家と同じく中流貴族のはずだ。そんな知り合いがいるという話を聞いた事もない。



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