現実主義の伯爵令嬢はお伽話のプリンセスと同じ轍は踏まない
「分からなくはないんです。確かにお名前を聞くのはうっかり忘れてしまいましたが、ヴェネディクトの大叔父様のおうちです」

「うっかり!うっかりで一番大切な事を聞き忘れてしまうなんて、まぁまぁ」

両の手のひらを天井に向け軽く肩をすくめる姿からはグレースの迂闊さを馬鹿にしているのが伝わってくる。きっとこれがどんな話であろうとグレースの希望である限り許したくないのだ。

父に話すはずだったのにどうして継母の同席を許してしまったのか。グレースは自身の甘さを呪ったが、後の祭りだ。
それでもなんとか反論しようと、グレースは小さく咳払いして口調を硬いものに改めた。

「お義母様、私はお父様にお話しているのです。お父様のご意見を伺いたく思います」

「まぁ!こんな不確かな話、旦那様がご意見をいただくまでもありませんわ」

「それでも!」

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