神志名社長と同居生活はじめました
居間に入り、テーブルを挟んで二人で座る。

一緒に暮らしている頃は、いつしか当たり前のように、よくこうして座っていた。
今でも自然にそうしてしまうのだから、お互いに思い出が嫌でも染み付いているのだろうな……と思ったら、嬉しさよりも切なさが込み上げてきた。


「……どこから話したらいいかな」

先に口を開いたのは社長の方だった。けれど、彼も頭の中が整理出来ていないみたいだ。


「……じゃあ、この間エントランスで一緒にいた女性が誰か、教えてください」

私がそう言うと、社長は目を丸くさせ、私の顔を凝視した。


「見てたんだ? 気が付かなかった」

「すみません」

「別に謝らなくていいよ。あの子はね、雅が中城から聞いたっていうーー俺の婚約者」

「え……?」

「ーーって、あの子は言うけど。俺にとっては、婚約者でも何でもない。あの子が勝手に言ってるだけなんだ」
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