神志名社長と同居生活はじめました
中城さんだけに知られているならまだしも、そこから社内に噂が広まることがあったらやり辛いなぁ、なんて……。


そんな私の様子に気が付いたのか中城さんは、



「あ、大丈夫大丈夫。俺は雪人から色々聞いてはいるけど、社内にバラしたりしないから」


だから安心してよー、と中城さんは笑って言う。

気を遣わせてしまって申し訳なかった。でも、そう言ってくれるのは有り難い。



「で、雪人とは上手くいってるの?」

相変わらず笑顔を絶やさないまま、中城さんが私にそう尋ねる。


「あ、えと、まあ……」

「へえ。あいつ、いつも無表情でボーッとしてるくせに、意外に肉食系でしょ。無理矢理襲われないように気を付けなよ」

「襲わ……っ⁉︎」

朝のオフィス内に相応しくない単語が突然飛び出してきたから、思わずギョッとする。


「いつから付き合ってるんだっけ? もうヤッた?」

「は、はあ!?」

な、何? いくら社長と親しいからって、私にまでこんな言い方するかな普通……?

それに……。


「あ、あの。肉食とか草食とかはよく分かりませんが……社長は優しい人です。無理矢理……なんて有り得ないです」


つい、言い返してしまった。社長が優しい人かどうかなんて、私よりも社長と付き合いの長い中城さんの方がじゅうぶん分かっているとは思うけれど……。



すると中城さんは、どこか冷めた視線を私に向けながら。



「ああ。そうか、大事にされてるんだね。いや、逆か」

「え?」

「いつでもすぐ別れられるように手を出さないだけか」



え……?
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